太宰治の名作「走れメロス」。
教科書にも掲載されている作品なので、一度は読んだことのある方がほとんどでしょう。
多くの人に読まれているこの物語には、一体どういったねらいがあるのでしょうか。
ここでは、「走れメロス」のあらすじと共に、人生に役立つ名言・教訓をご紹介します。
私も教科書で読んだことがあるよ。言葉が古風だけど、内容はシンプルですよね。
登場人物
メロス
主人公。羊飼いで正義感が非常に強い。
物語では、妹の結婚式の準備のためシラクスという町を訪れている。
セリヌンティウス
メロスの親友。シラクスにて石工をしている。
メロスが王に反逆して処刑されそうになったとき、身代わりとして3日間人質となることを約束してくれる。
ディオニュシオス1世
シラククの王様。
暴君ディオニス王と呼ばれており、人間不信のためシラクスに住む人々を処刑している。
人間は私欲の塊との思いが強く、反逆してきたメロスに対しても即処刑を命じる。
妹
メロスの16歳になる内気な妹。
結婚を控えている。
婿
メロスの妹の婿で牧人。
急に「明日結婚式を挙げて欲しい。」と頼んできたメロスに驚くが、最終的にはメロスの意見を受け入れ妹と結婚する。
「ギリシャ神話」が元になってできた話なので、名前が難しいですよね。蛇足ですが、私はいつも「メロス=阿部寛(テルマエ・ロマエ)」で脳内再生されます。
あらすじ
正義感の強い羊飼いのメロスは、妹の結婚式の準備を行うためシラクスの町を訪れます。
ですが、2年訪れたときとはどこか町全体の様子が落ち込んでいるように見え、メロスは不審に思って市民に何があったのか聞きました。
すると、シラクスの町の王ディオニュシオス1世が、人間不信に陥って人々を処刑しているということが分かりました。
これを聞いて大変激怒したメロスは、市民を助けるためにも暴君ディオニス王を殺してしまおうと短刀を持って城へ向かいます。
ですが、あっけなく衛兵に捕らえられてしまい、暴君の目の前へ突き出されることに。
王は、暗殺を目論んだメロスを処刑することに決めるのですが、メロスは妹の結婚式にだけはどうにか出席させて欲しいと懇願します。
メロスは「3日間の猶予をくれたら妹の結婚式を挙げてまた戻ってくるのでどうか帰らせてほしい。」とお願いするのですが、王はもちろんそんなことは信じようとしません。
そこで、メロスはこの町で石工をしている親友セリヌンティウスを3日間人質にする代わりに、自分を妹の所へ帰らせて欲しいと提案します。
王は最初はこの提案を飲もうとはしませんでしたが、戻ってこないメロスの代わりにセリヌンティウスを処刑し、やはり人は信用できないということを証明しようと目論みます。
そして、セリヌンティウスを人質にする代わりに釈放されたメロス。
急いで村に帰り、誰にも本当のことは言わないまま急遽妹の結婚式を執り行うのでした。
式を終えたメロスは、また急いでセリヌンティウスの待つ城へと向かいます。
ですが、約束の夕刻までに到着するまでに様々な困難に襲われ、心身ともに困憊してしまいます。
そこで一瞬だけこのまま逃げようかと考えてしまったメロス。
ですが、王を見返すため、セリヌンティウスを救うため、自分の信念を曲げないためにも、メロスは処刑されるために城を目指すのでした。
そして、夕刻直前、セリヌンティウスの処刑前にギリギリ戻ってこれたメロス。
メロスはセリヌンティウスに一度だけ裏切ろうとしてしまったことを詫びます。
するとセリヌンティウスも、一度だけメロスがもう帰ってこないのではないかと疑ってしまったことを詫びるのでした。
この様子を見ていた王は、人を信じることや真の友情の姿に感動し心を改めます。
そして2人は釈放され、シラクスの町には以前のような平和が戻ったのでした。
名言
その1
「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」
平和を望んでいると言った暴君ディオニスに対しメロスが放った言葉です。
安心できる生活を望んでいながら、人を傷つけてしまうことってありますよね。
皆が幸せになるためにと思ってやっていることが、全く逆の方向へ向かっていないか自分自身も振り返ってみる必要がありそうです。
その2
「おまえの兄の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。」
結婚式を挙げた後の妹にメロスがかけた言葉です。
人を信じることを何より大切にしてきたメロス。
もう会えないと自分だけが分かっていながら、妹に優しい言葉を送るのです。
人を疑うことや嘘をつくことはついやってしまいがちなことですが、パートナーとの良好な関係を築き上げたかったらそれらはなくしていくことが重要です。
秘密を作らない、話し合う時間や心の余裕を持つということの大切さを教えてくれる名言と言えるでしょう。
夫婦間だけではなく親友との関係にも言えることだよね
その3
「私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。若い時から名誉を守れ。」
妹の結婚式を終えた後、城へ向かう最中にメロスは走りながらこう思います。
本当はずっと妹たちと幸せな時を過ごしていたいはずなのに、メロスは自分の信念や名誉を投げやりにしようとはしませんでした。
何か物事をやり遂げようと決めたときでも、つい「やっぱりやめておこうかな。」とか「明日からでいいか。」と弱い気持ちが出てきてしまうもの。
そんな弱さを振り払うメロスの強い言葉は、私たちに勇気を与えてくれます。
その4
「信じられているから走るのだ。」
夕刻の時が近づいてきて、メロスの元へセリヌンティウスの弟子フィロストラトスがやって来てもう間に合いそうにもないから走るのをやめるようにと言いに来ます。
ですが、メロスは走るのをやめず、この言葉を彼に言うのでした。
信じてくれている人がいると思い、諦めずに最後まで走りぬこうとするメロス。
私たちも何か挫けそうになったときは、自分を信じて応援してくれる人の存在を思い出したいものですね。
その5
「おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。」
帰って来たメロスを見て、王がメロスとセリヌンティウスに言った言葉です。
信実とは空虚な妄想ではないと言い切れるほど2人の姿に感銘を受けた王。
信じることの大切さは分かっていながらも、どうせ裏切られてしまうと人間不信に陥り気味な人も多いはず。
正直な気持ちを持ち続けることの尊さが伝わってくる言葉です。
教訓
立ち向かう勇気が状況を変える
シラクスの町は、暴君の大量処刑により重々しい雰囲気に包まれていましたが、市民たちは皆自分や自分の愛する人が処刑されることに怯え何も行動を起こせずにいました。
そんな中、この状況を何とかしようと一人立ち向かったメロス。
たくさんの困難はありましたが、結果彼はシラクスの町を平和に戻すことに成功します。
このように、皆がどうせ変わらないと諦めている場面でも、何とかしよう、自分が変えようと立ち向かう勇気は大きく状況を変えることだってあるのです。
「誰かがやってくれるだろう。」という思いから「自分が変えてみせよう。」という気持ちへの変換こそが、状況を変えるチャンスになると言えるでしょう。
疑うより信じよう
人間不信になることは誰だってあると思います。
特に、一度大事な人に裏切られたとか、陰で悪口を言われていたなんてことが分かると、なかなか人を信用することはできなくなりますよね。
それでも、疑うより信じることの大切さをこの物語は教えてくれています。
信じ続けることで、それはやがて本当になり、そして周りの人たちと心が通じ合うようになるのです。
メロスもセリヌンティウスも、一度は裏切りの気持ちを持ってしまったわけですが、それらを隠さず正直に伝えあっています。
これも、相手を信じて受け入れてくれると思っているからこそですよね。
疑うより信じようということをこの物語は教えてくれていると言えるでしょう。
信念を持つことの大切さ
実はメロスは、妹の結婚式を終えて城へ戻る間あまりセリヌンティウスの命のことは案じていないかのように描かれています。
それよりもメロスが確固として曲げなかったのは、人を信じることと、信じてくれている人のために走るという信念の方でした。
もちろん、自分の身代わりになってくれたセリヌンティウスを何とか救いたいという気持ちもあったでしょうが、メロスはそれ以上に自分の信念を大切にしていたのです。
これだけ聞くと「何だかメロスって冷たくて自分勝手?」と思えてきますが、何か物事を達成するためには信念を強く持つことが何よりも重要であることが多いものです。
例えばですが、スティーブ・ジョブズも、少々奇抜で変わった面はあるものの、信念を曲げなかったため大きな成果を成し遂げたと言えます。
このように偉人の中には信念を強く持ち続け、それを大切にするからこそ成功を果たす人は多いのです。
皆さんも、何か信念はあるでしょうか。
もしある人はそれを曲げず大切に持ち続けていきましょう。
まだない人は、何か好きなことや興味があることにどんどん挑戦して、自分の中で信念を持つことができるようにしてみてください。
走れメロスの心に残る言葉・セリフまとめ
いかがだったでしょうか?
一度は教科書で読んだことがある「走れメロス」ですが、改めて名言や教訓を見直すと面白いですよね。
大人になってから見直すと、また新しい発見がありそうです。
↓走れメロスの感想文もチェック!↓
↓あなたにオススメの本↓
コメント