梨木香歩さんの小説「西の魔女が死んだ」は、疲れた心に癒しを与えてくれる懐かしい思い出のいっぱい詰まったように感じる小説です。
2008年6月には映画化されており、文部科学省特別選定作品、青少年映画審議会推薦作品などにも選ばれているほどの作品。
今回はそんな「西の魔女が死んだ」のあらすじや名言、物語から読み取れる教訓について解説していきたいと思います。
私も何度も読んだ本。読むたびに色々なことを考えさせてくれる本です。
西の魔女が死んだの登場人物
まい:物語の主人公。
イギリス人と日本人のクオーターで、中学校で周りに馴染めずクラスから孤立することとなってしまいます。
そんな中、持病の喘息の治療をするためという理由もあって、まいはおばあちゃんのいる田舎で療養をすることになります。
そこでは「魔女修行」と称したたくさんのおばあちゃんの教えを学ぶことができたのでした。
おばあちゃん:まいの母方の祖母でイギリス人。
まいのことを温かく迎え入れ、魔女になるための修行を行います。
自身が所有する土地の一部をまいの名義に変えるなど、発想が大胆な一面も。
近所に住む人たちにも寛容であるため、人見知りのまいとは意見が合わず衝突してしまう場面もあります。
ママ:まいの母。
日本人とイギリス人のハーフ。
おばあちゃんのことを「西の魔女」と呼んでいます。
自身も日本の学校に溶け込めなかった経験があるため、まいの気持ちが少しだけ分かる部分があります。
パパ:単身赴任中のまいの父。
田舎で静養中のまいのところへ行き、家族で引っ越すことを提案します。
まいが死について質問した時は「死んだらそれっきり。」と答える淡泊な部分もあります。
ゲンジさん:おばあちゃんの近所に住んでいるおじさん。
少し気が利かない部分があり、まいの土地に断りもなく入ったり、怪しい雑誌をそこら辺に捨てたりと、まいにとっては苦手な存在です。
また、まいがクオーターであることや、不登校であることをあざ笑ったため、まいに逆上されることも。
ですが、おばあちゃんの最後を看取った存在であり、その後もまいのおばあちゃんの家を大事にしてくれていたということを後々まいは知ることになります。
おじいちゃん:おばあちゃんの夫
物語中では既に亡くなっています。
生前はゲンジさんによくしていたということをまいは知ります。
本の題名である「西の魔女」というのは、まいを励ましてくれたおばあちゃんのことですよ。
あらすじ
物語は、まいがおばあちゃんの元で過ごした2年後から始まります。
まいの所へおばあちゃんが危篤という連絡が来て、まいはそこからおばあちゃんと一緒に過ごした中学生時代のことを思い出すのです。
中学に入学したころ、周りのクラスメイトに同調することに浸かれ不登校になってしまったまい。
持病の喘息の療養も兼ねて、おばあちゃんの住む田舎で暮らすことになります。
そこでまいがおばあちゃんから教わったのは「魔女修行」でした。
その修行とは「自分で決めること。」ができるようになるための行動や考え方を教えてくれるものだったのです。
魔女になるための具体的な修行は、規則正しい生活や、ジャムを作れるようになること、自然とたくさん触れ合うこと、自分だけのお気に入りの場所を作ることなど、わくわくすることばかりでした。
そして、おばあちゃんと日々を過ごす中、だんだんと心に元気を取り戻していくまい。
ですが、近所に住むおばあちゃんの知り合いゲンジさんとはうまくいかず、彼の気が利かない態度や横柄に見える人柄にまいは嫌悪感を抱いていくのでした。
そんな中、おばあちゃんの家の鶏小屋が何者かに荒らされてしまい、鶏の死に関して直面したまい。
その日の夜にまいとおばあちゃんは「人が死んだらどうなるか。」という話をすることになります。
おばあちゃんはまいに「人の死とは魂が体から離れて自由になることだ。」と伝え、自身が死んだときはまいに教えるという約束をします。
そしてある日、事件は起こりました。
ゲンジさんがまいのお気に入りの場所である付近を断りもなく耕してしまったのです。
その様子を見て、動揺し怒るまい。
おばあちゃんにゲンジさんを罵倒する言葉を言ってしまいます。
そんな酷い言葉を聞いたおばあちゃんは、思わずまいの頬を叩いてしまい、このことがきっかけとなりまいとおばあちゃんの間に確執ができてしまうのでした。
その後、まいの父親が自分の単身赴任先であるT市に家族そろって住むことを提案してきたため、まいとおばあちゃんはそのまま離れ離れになります。
そして2年後、おばあちゃんが亡くなり、まい一家はおばあちゃんの家を訪れます。
確執のあるまま別れてしまったことを酷く後悔するまい。
ですが、以前おばあちゃんとまいが死んだときに教えると約束した痕跡をまいは発見します。
まいはそれを見て、おばあちゃんに愛されていたということを改めて感じ、「おばあちゃん、大好き。」と呟いたのでした。
名言
名言1
「悪魔を防ぐためにも、魔女になるためにも、いちばん大切なのは、意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力です。」
おばあちゃんが魔女修行を始めるに当たってまいに言った言葉です。
まいに与えられた魔女修行は、早寝早起きや食事管理、運動をしっかりするといった当たり前のような暮らしのことでした。
そんな当たり前のことをしていて、悪魔を防ぐことができるのか不思議に思ったまいにおばあちゃんは優しくこの言葉をかけます。
当たり前の生活習慣ができていないと、どうしても心も弱くなってしまうもの。
まずは自分を鍛えるところから始めようということに気付かされる言葉です。
名言2
「十分に生きるために、死ぬ準備をしているわけですね」
おばあちゃんとまいが人の死について話していたときの言葉です。
おばあちゃんは、人には魂があると信じています。
そして、死ぬということは、魂が体から離れて自由になるということ。
生きている間は魂がたくさんの経験をしているときだから、瞬間瞬間をありがたく思って生きなくてはということに気付かされます。
名言3
「サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、だれがシロクマを責めますか。」
周りに馴染めず不登校になってしまったまいにおばあちゃんがかけた言葉です。
自分にはこの場所しかないと思うと、人はそこに馴染めなかったときに辛く悲しい気持ちになってしまいますよね。
でも、世界は広い、自分が自由に安心して生きられる場所は自分で決めることができると思っていれば、辛い毎日も希望の日々へと変わっていきます。
自分で選択した道で、自分らしく生きていくことの大切さを教えてくれる名言と言えるでしょう。
名言4
「アイ・ノウ」
物語の中でまいが「おばあちゃん大好き」と伝えると「アイ・ノウ」とおばあちゃんが返す場面があります。
これは英語の「I know」なのですが、「あなたの気持ちは理解しているよ。」という優しい魅力溢れる言葉と言えるでしょう。
自分の愛情が理解されていると思うと、幸せに満ち足りた気持ちになりますよね。
物語を読んだ後は「アイ・ノウ」を言うのが口癖になっちゃいました><
教訓
人生は自分で決めていい
親や周りの期待に応えようと、人の決めた道を一生懸命外れないように生きていく人もいますよね。
順調に行っている間はそれでいいかもしれませんが、そこで一度挫折してしまうとなかなか元に戻れず、それどころか周りを責めてしまうこともあるかもしれません。
そこで大切なのは、自分の人生は自分で決めていいんだと思えることです。
自分の居場所はここしかないと頑固になるのではなく、知らない世界や新たに迎え入れてくれる仲間がいることを私たちは知っておくべきではないでしょうか。
この物語からは、そういった視野を広くして人生の選択を増やすことの大切さが学べます。
嫌な場所からは逃げることも必要
中学校生活に馴染めなかったまいに対して、おばあちゃんは逃げることの大切さを教えてくれます。
まいは学生だったため、学校という場に馴染めなかったわけですが、実際今もブラック企業で苦しんでいたり、苦手な親戚付き合いに疲れ果てたりしている人もいるはず。
そんなときは、ここを乗り切らないと弱いままだと無理をするのではなく、逃げてしまうことも考えてみましょう。
逃げることは行動を踏み出すことであり、恥じることではありません。
環境を変えることで、気持ちに変化が生まれてまた明るい気持ちで日々を過ごせるようにだってなるはずです。
日本人はなかなかその場から逃げるという選択をしないですが、おばあちゃんの言葉を読んでいると逃げて違う道を選ぶことも大切なことだと思えるようになります。
「死」は終わりではない
おばあちゃんが亡くなったあと、まいは「魂は長い旅を続ける」というメッセージを目にします。
これは、死んだら終わりと答えるまいの父とは対比した言葉と言えるでしょう。
「死」=終わりと考えてしまうと、人生も虚しいものに思えますが、魂は永遠にあって旅を続けていると思うと、どこか気持ちが温かくなり、生きている時間を大切にしていこうと思えますよね。
周囲の人たちに対しても、魂として旅を続ける仲間なのだと思えると優しい気持ちで接することができるようになると思います。
西の魔女が死んだの心の残る言葉・セリフまとめ
いかがだったでしょうか?
あらすじや名言を見直すると、また小説が読みたくなりますよね。
また、「西の魔女が死んだ」は映画化もされていますので、DVDを借りてみるのもオススメですよ。
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